きゅうかわきたていべってい(きゅうわつじてい)
【日本遺産040】
戦前から戦後にかけて『自由を我等に』
『天井桟敷の人々』『第三の男』ほか
数多くのヨーロッパ映画の名作を輸入・配給し
戦後は、国際映画祭を通して
日本映画を積極的に海外に紹介した
「東和商事」(現在の映画会社・東宝東和)の
創設者である川喜多長政・かしこ夫妻の別邸。
山と黒い板塀に囲まれた
桟瓦葺き屋根の和風建築は
1961(昭和36)年、東京にあった
哲学者・和辻哲郎の住宅を移築したもので
もとは神奈川・大山の古民家だったそうです。
生涯を通じて外国映画の輸入と配給、
海外への日本映画紹介などに
情熱を注いだ川喜多夫妻はこの和風の建物を
海外から訪れる映画監督や俳優たちを
迎える場として活用しました。
アラン・ドロン、
フランソワ・トリュフォー監督ら
往年の名だたる映画スターや監督らが
この家を訪れました。
旧市街地の高台に建ち、背後の山並みと
桟瓦葺きの屋根が調和した和風建築で
内部には太い梁や柱に支えられた土間があり、
独特の風情があります。
作りつけの書棚がある和室は
和辻哲郎が書斎として使っていた部屋で
落ち着いた雰囲気をとどめています。
居間の隅には炉が切られ
畳の上にはテーブルと椅子が置かれるなど
海外からの客人を日本情緒豊かな空間で
もてなしたことを物語ります。
鎌倉ゆかりの映画監督小津安二郎を敬愛する
ドイツのヴィム・ヴェンダース監督は
1985(昭和60)年製作の
ドキュメンタリー映画『東京画』で
小津作品には欠かせない俳優笠智衆の撮影を
この別邸の縁側を使って行いました。
東側の母屋は整備され、現在は
「鎌倉市川喜多映画記念館」となっています。
【旧川喜多邸別邸(旧和辻邸】
景観重要建造物