江戸から明治へ時代が移ると、風習や風俗も時代にあわせ変容しますが、鏑木清方が幼少期を過ごした東京の下町は、江戸の文化が色濃く残っていました。
すぐれた文筆家でもあった清方は、明治の東京の街並みや人々の暮らしを数々の随筆に書き残しました。新春の風情について触れた随筆では、年賀状の意匠に思いを巡らせ、新春芝居や弟子たちとの新年会をたのしむ清方の姿をうかがうことができます。
本展覧会では、筵を敷いて鏡餅の準備をする様子や羽根つきに興じる様子など、江戸のかおり残る頃の年末年始の情景に取材した作品や口絵を、清方の文章とあわせてご紹介します。また、清方作品を名押絵師・永井周山が意匠化した押絵羽子板「明治風俗十二ヶ月」も展示いたします。