三河屋本店

みかわやほんてん
​【日本遺産049】

国登録有形文化財
鎌倉市景観重要建築物等

1900（明治33）年に創業した老舗酒店で
​​店内では地酒や地ビールなどを販売しています。

　
現在の建物はこの地で酒店を営んでいた
創業者の竹内福蔵が
関東大震災で倒壊した建物に代えて
1927（昭和２）年に建てたものです。
　

その後も大きな改造を受けずに
今日に至っています。

若宮大路の沿道でも
ひときわ目を引く重厚な商店建築は
軒が大きく前面に張りだした
伝統的な出桁造りが特徴です。

　
店舗正面に掲げられた
扁額(※1)の「三河屋」の字は
建長寺住職であった菅原時保の書に
基づくものといわれます。

敷地の奥には大きな蔵があります。
この蔵と店舗の間には酒を運搬するための
30mあまりのトロッコレールが敷かれ
今も現役で活躍しています。

若宮大路沿いには
戦前創建の店舗兼住宅がいくつか現存しますが
規模的にもデザイン的にも代表的な存在が
この三河屋本店と湯浅物産館です。
この２つは共に金子卯之助という
大工の手になるものです。

三河屋本店は当初
別の大工が担当することになっていましたが
店主の竹内福蔵が建物に関して
種々厳しい要求をするので逃げ出し
金子卯之助が引き受けることになった
と伝えられています。

店舗、蔵、そしてトロッコ用レールと
戦前の店舗兼住宅の建築がワンセットになって
そのまま現在も用いられている三河屋本店は
建築史的にも民俗史的にも
きわめて貴重な存在といえます。

※1　へんがく：門戸や室内などに掲げる横に長い額