鎌倉と映画、そして小津
鎌倉と映画、といえばかつての松竹大船撮影所の存在を抜きにして語れない。良好な自然環境、東京に近い利便性などを理由に大船に撮影所が移ってきたのは昭和11年10月のこと。以来、『愛染かつら』『君の名は』等数々の名画を世に送り出してきた。鎌倉文士の作品が映画化されたのも少なくない。
鎌倉と撮影所のゆかりをあらわす人物として欠かせないのが、映画監督・小津安二郎だ。小津は『晩春』『麦秋』『東京物語』など数多くの名作を発表、日本映画の黄金時代を支えるとともに、世界的な評価を得た。昭和27年から亡くなるまでの10年余、北鎌倉の浄智寺のそばに住み、里見とんや川端康成ら、鎌倉文士とも交流をもちつつ映画制作に取り組んだ。
円覚寺の境内に「無」と刻まれた黒御影石の墓碑がある。その下に、小津は母あさゑとともに静かに眠っている。