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こころ整う非日常の世界で~3つの緑の魅力とは~

サムネイル写真

 

心を癒す体験を。禅の教えと抹茶の文化

 ゆっくりと自然を感じながら、一杯の抹茶を愉しむ。そんなかけがえのない時間をもたらしてくれる、鎌倉にある臨済宗建長寺派報国寺の抹茶体験。日々の暮らしの中で、心安らかに自分と向き合う時間を得るのは難しいこと。禅の教えや抹茶の背景にある文化・考えには、忙しく働く現代人にとって大切なものが詰まっています。

この記事では心を癒す体験ができる人気の場所、報国寺に込められた禅の教えと素晴らしい3つの緑(抹茶、竹林、苔)を紹介していきます。

抹茶体験のできる施設の外観写真

 

鎌倉と抹茶と禅の関係

 そもそもなぜ抹茶が禅寺で振る舞われるのでしょうか。抹茶は鎌倉時代初期、臨済宗の開祖である栄西禅師(えいさいぜんし)が中国の宋から茶の種子を持ち帰り、茶の栽培、喫茶の方法や養生など「喫茶養生記(きっさようじょうき)」に著したのが、現在の喫茶文化につながる源だと伝えられています。

坐禅を組む際、抹茶は内面の静けさを保ちつつ、頭をすっきりさせ、煩悩を取り払うのを助けてくれると好まれました。また、禅寺では茶礼(されい)という儀礼が行われています。茶礼は朝の座禅の後、食事後、就寝前など一日に数回、一つのやかんから淹れたお茶を修行僧みんなで分けて飲むという作法で、仲間同士で同じお茶を飲むという行為を通じ、和合(わごう)の精神を説いています。

 このことからも、禅宗とお茶がいかに密接な関わりを持ってきたか、おわかりいただけるのではないでしょうか。たまにはお茶を共に飲みながら、和合の時間に身を委ねてみるのもいいかもしれません。

 

座禅が行われる間の写真

 

心にも体にも効く 抹茶と健康

 「喫茶養生記」には、「茶は養生の仙薬なり」と記されており、元々は嗜好品ではなく、健康のための薬としてとらえられていました。

 抹茶にはカフェインが豊富に含まれており、睡眠欲を抑え、精神的な安定をもたらすといわれています。また、五臓(心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓)の働きを調和させ、身体の調子を整える効果が記されています。栄西禅師は抹茶を精神的・身体的な「薬」としてとらえていたそうです。
そして抹茶にはテアニンという鎮静作用をもたらす成分が含まれています。これによって抹茶を飲むと心拍数が下がりリラックスする効果も認められています。

 

抹茶を持つ手の写真

 

抹茶の匠 衹園辻󠄀利に抹茶の魅力を聞く

 海外では緑茶自体の抗酸化作用にも注目が集まっており、健康志向が高まる現代において効果が期待される飲み物となっています。心にも体にも健康をもたらす抹茶の人気について、報国寺に抹茶を提供している京都の老舗、衹園辻󠄀<外部リンク>利に伺いました。

 

祇園辻󠄀利の提灯の写真

 

1)近年、国内外で抹茶が注目されています。お客様の反応で変化してきたことはありますか?

――― 海外のお客様には、抹茶オレなど砂糖入りの甘いドリンクが好まれた時期もありましたが、現在では抹茶そのものをお求めになるお客様が多くなりました。健康への意識が高い欧米の方はもとより、台湾などアジアの方も「MATCHA」を求めて衹園本店へご来店されています。店頭では、外国語対応スタッフの増員をはじめ、様々な趣向を凝らした30種類以上ある抹茶のラインナップからお求めやすいように商品説明のポップを工夫し、環境づくりを行っています。

 

2)報国寺へ独自のブレンド抹茶を提供するにあたって、意識されたこと、他と違う点はありますか?

――― 覆下園(おおいしたえん)という日光を遮る栽培方法で育てた茶葉は、農産物ゆえ天候によってその味わいが変わります。品種や採取場所などが異なる数種類の茶葉を「合組(ごうぐみ)」という工程でブレンドし、味筋を整えています。

 国内外から報国寺様へお見えになるどのお客様にもおいしいと感じていただけるよう、また一緒に提供される和三盆の干菓子に合うような味筋にこだわりました。報国寺様と打ち合わせを重ね、抹茶特有のコクと旨味・甘味を豊かに含みながら、ほどよい苦渋みが感じられるバランス重視の味わいに仕上げています。

 

覆下園の写真
 

碾茶炉の写真

 

3)報国寺で提供されているように、お抹茶と干菓子を一緒にいただく時のポイントはありますか?

――― お抹茶にお菓子は付きものです。お菓子の甘さが抹茶の奥深い味わいを引き立て、抹茶もお菓子のおいしさを引き立てる相乗効果があると思います。

また、抹茶は茶葉を粉状に仕上げ、お湯に溶かして飲むものなので、茶葉をそのまま体内に取り込む、いわば「パワーフード」です。そのため、空腹時に飲むと、胃に少々負担がかかるかもしれませんが、お抹茶を飲む直前にお菓子を食べることで、空腹時の胃の負担を和らげることができます。

 

お盆に乗った抹茶とお菓子の写真

 

4)衹​園辻󠄀利さんは今までさまざまな企業と商品コラボをしていますが、今、一番注目しているものは何ですか?

――― 弊社の抹茶をコラボ商品のお菓子やスイーツの原料としてお使いいただけることは、抹茶本来の味わいを広く知っていただける非常にありがたい機会です。また、お茶成分とオーガニック素材と組み合わせた「TEA SOAP」というお茶の石鹸も好評です。目新しいジャンルでは、アパレル企業が開発・販売した抹茶染めのTシャツは、茶カテキンの効能による消臭効果があるのではないかと注目しています。

 

5)最後に、報国寺でお抹茶を愉しむ人に一言お願いいたします。

――― 衹園辻󠄀利は京都・衹園に本店を構える宇治茶専門店で、すぐ近くの臨済宗建仁寺派大本山「建仁寺」様に長年、御用達の抹茶をお納めしています。報国寺ご住職が建仁寺で修行されていたご縁をきっかけに、報国寺様へも抹茶をお納めするようになりました。

 

お客様がおいしいと感じられるその陰には、抹茶の保存方法、丁寧な点て方、和三盆の品質にもこだわったオリジナルの干菓子の準備があってのこと。我々はその力をお借りし、衹園辻󠄀利の抹茶本来の味わいでお客様に感動をご提供できるよう、良質な抹茶を京都よりお届けしています。五感が研ぎ澄まされるような荘厳で静寂な竹の庭で、干菓子とともに宇治抹茶を嗜むひとときをお愉しみください。

 

報国寺での抹茶体験〜五感(視・聴・香・味・触)〜

 国内外の方に人気の鎌倉 報国寺のお茶席「休耕庵(きゅうこうあん)」。その人気の背景には、禅の教えと抹茶文化の心が込められていました。

 手軽に禅の心と抹茶の文化を愉しんでいただきたい。そんな思いからお茶席がつくられました。耳を澄ませると鳥のさえずりが聴こえ、活力に満ちた孟宗竹を見渡すことができ、抹茶の温もりや香り、味を楽しむことができます。日々の生活に疲れたときはちょっとだけ背筋を伸ばして、お茶を一服してみてはいかがでしょうか。あなたの五感を通してさまざまな自然の変化を感じながら、抹茶をお召し上がりください。

 

休耕庵でのお茶の写真

 

報国寺の歴史と見どころ

 報国寺は臨済宗建長寺派の寺院で、足利尊氏(あしかがたかうじ)の祖父・家時が開基となり、1334年(建武元年)に建てられました。境内にある横穴式の墳墓のやぐらは、開基・足利家時(あしかがいえとき)と四代鎌倉公方・足利持氏(あしかがもちうじ)の嫡子・義久(よしひさ)の墓と伝わっています。

 一番の見どころは、約2000本の孟宗竹が織り成す竹の庭です。竹林の隙間から動く木漏れ日や雨に濡れて艶めく竹の葉、風でさやさやと揺れる音など、季節や時間帯、天気によって、さまざまに楽しめます。庭園を歩くと、つやつやとした鮮やかなグリーンの苔や季節の花々、種類豊富な植栽も見られます。自然の風合いや鎌倉らしい無骨さを活かし、枝ぶりや高低のバランス、石碑・石仏・灯篭との調和なども考え抜かれ、趣向を凝らした庭園におもてなしの心を感じていただけるのではないでしょうか。    

 

孟宗竹が織り成す竹の庭の写真

つやつやとした鮮やかなグリーンの苔の写真

 

報国寺と文豪たち

報国寺とゆかりのある人物として、「伊豆の踊子」や「雪国」で知られる小説家・川端康成がいます。1933年(昭和8年)に同人誌「文學界」を創刊しますが、共同編集人だった 林房雄、深田久弥らは皆、鎌倉に住んでおり、林房雄に誘われ、1935年(昭和10年)に報国寺がある谷戸に移住したといわれています。その後、鎌倉市二階堂や長谷に転居し、生涯を鎌倉で過ごし、「山の音」や「千羽鶴」など、鎌倉を舞台にした小説を残しました。かの有名な文豪も、報国寺や周辺を歩きつつ、自然を愛で、風を感じ、野鳥のさえずりや葉擦れに耳を傾け、作品の着想を得ていたかもしれません。報国寺の周辺には、当時の面影を残すであろう風景があるので散策してみてはいかがでしょう。

 

鎌倉で見られる自然の写真

 

報国寺への訪れ方

報国寺はJR鎌倉駅から東へ約2.2kmの宅間谷(たくまがやつ)と呼ばれる谷あいにあり、バスで訪れるのが便利です。
鎌倉駅東口を出てすぐのロータリーから、バスは約10分間隔で運行。鎌倉霊園正面前太刀洗行き(鎌23)/金沢八景駅行き(鎌24)/ハイランド循環(鎌36)の京浜急行バスに乗って約10分、6つ目のバス停・浄明寺で下車します。

 

報国寺までのサインの写真
 

報国寺の山門の写真

バス停・浄明寺からは滑川に架かる小さな橋を渡り、徒歩2分ほどで報国寺の山門に到着します。

 

 

報国寺の写真

■報国寺
住所 神奈川県鎌倉市浄明寺2-7-4
Tel 0467-22-0762
拝観時間 9時~16時(抹茶の受付は15時30分まで)
定休日 12月29日~1月3日※天候等により休止する場合があります。
料金 拝観料400円、抹茶(干菓子付き)600円
HP https://houkokuji.or.jp/
アクセス JR鎌倉駅東口より京浜急行バス鎌倉霊園正面前太刀洗行き/金沢八景駅行き/ハイランド循環で10分、浄明寺より徒歩2分

 

祇園辻利本店の外観写真

■衹園辻󠄀利 (衹園本店)
住所 京都府京都市東山区四条通衹園町南側 573-3
Tel 075-551-1122
営業時間 10時30分~20時(ソフトクリームL.O.19時30分)
※予告なく、営業時間を変更する可能性があります。
定休日 不定休
HP https://www.giontsujiri.co.jp/<外部リンク>
アクセス 京阪電車 - 衹園四条駅6号出口3分四条通沿い
市バス - 祇園バス停下車

1
​茶寮都路里 大丸東京店<外部リンク>

 2
​■宇治茶 衹園辻󠄀利 東京スカイツリータウン・ ソラマチ店<外部リンク>

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